舟木一夫もう一つの大作

高校三年生で鮮烈なデビュー、学園三部作から青春歌謡。絶唱、夕笛、初恋などの抒情歌謡の大作。そんな中で、歌謡界に例をみない貴重な大作がある。松山善三作、船村徹音楽、舟木一夫歌唱の「その人は昔」である。当時のLP磐裏表、一時間以上舟木が歌い語る。歌謡組曲か歌物語のような画期的な作品でした。LP磐が十万枚以上売れない時代に四十万枚の売上げで芸術祭参加の大ヒットだった。松山善三の作品に船村徹の作曲、舟木の歌唱力。影の立役者、栗山章の企画が的中した。翌年には東宝で映画化もされ、舟木一夫、内藤洋子のコンビで人気を博した。その人は昔こそ、舟木一夫全盛期の最高傑作であり、舟木一夫五十数年の歌手生活の中でも特筆すべき作品である。今も「その人は昔」は時々聴いているが、舟木21歳の歌唱は素晴らしい。